ボーイズ・オン・ザ・ラン 花沢健吾

少し前に、ヤフーの立ち読みで気になっていた
ボーイズ・オン・ザ・ランを一晩で読みきりました。

「この漫画がすごい」
でも取上げられた事もある、カルト的な漫画の一つなんですが、
なかなか、欝展開の連続がヘビーなしんどい系漫画です。

まず第一に、
登場人物たちの表情や、しぐさの描写のデフォルメがえぐい。

恐いヤーさんや、ヤンキーのムカツク態度
魔性の女の子のずるい笑顔
何もかも上のエリート同期のさわやかなゆえの残酷なスマイル

自分の人生の中でも、あぁ~こんなシーンあった。
あ~、こんなヤツいた

って連続で、アマゾンのレビューでもあったけど、
経験者にとっては、「SFホラー」モノより、恐い!
「現実の生活のうえでのリアルなホラー」がばんばん、にじみ出ているんですよね。

特に、女の子からの裏切りの連続がリアルすぎる。
そして、主人公(と読者)は、馬鹿なもんだから、すぐに許してしまって、
また翻弄される。

主人公と一緒に、何度も、好きになったり、嫌いに成ったり。
希望を何度も持つから、絶望も何度も味わう。
まさに、うそ臭さのない、リアルな大人の恋愛の描写。

一つのストーリーの中で、これほど、同一人物が、見方、悪役が
入れ替わる漫画って珍しいかも。


以下少々ネタバレですが・・・・


最終的には、救われないもの同士が集まって、
家族を作ってハッピーエンド?!っぽい終わり方なんですが、
こういう、単独だと、不安定なので、その、足りない部分を保管目的で、
集まって出来た家族関係って、
案外、すぐに壊れてしまう気もするんだよな。
家族に限らず、会社、趣味仲間、それら全部含めて、
「不完全保管目的集団」である限りその行く先はあやしい。

個々が独立時であっても、安定または、安定する努力が出来る状態でないと
たとえ、一時的に集まって助け合ったとしても、結果はいずれ、
悲劇へのどんでん返しになっていきそう。


絶対疑うべきもない、ぶれない愛情。
損得勘定や、努力ではなく、自然にあふれてくる道徳心や貢献心。

こういうものって、幻想で、レア・・・だからこそ、
見つけられたときは、幸せだよなぁ。

今の僕でいえば、親として、子供達に対する気持ちか。


でも、日本に限らず、世界の歴史を振り返っても、親子、兄弟の殺戮は多いし、
最近の報道を見てもカワイイ盛りの子供がいる世帯のはずなのに、
日々のストレスでこわれてしまった親から受ける虐待が加速化している様子。

結局、親子の感情も、絶対のものではなさそう。


「絶対」はどこにもなくて、「夢見て維持してすがる」という事を再認識した。


最後に、背筋が寒くなる衝撃を受けた台詞を一つ引用します


好きな仕事に就けなくていい。
夢中になれる趣味や好きな人がいれば
オレには何もない。

無職失恋敗北無能
でもぜんぶ自分で選んだんだ