中学理科がいつの間にか難しくなっていた!

8年ぶりに、高校受験理科を教える事になりそうなので、
時間の合間を縫って、さび付いた理科の知識を修復しています。
 
もともとは、十数年間、高校受験理科指導専門に仕事をしていたので、
教科書、指導書、学習指導要綱の重箱の隅まで暗記していて、
主な参考書や問題集の癖、最新入試問題のトレンドも把握していたのですが、
そういうのが必要の無い所に8年ほどいたので、OHが必要です。
特に、2012年度使用開始の、脱ゆとり教科書第一弾。
これが中々濃い!
 
ある程度は、体が覚えているのですが、
理科の授業って、(社会もそうですが)教科書の文面の裏に
潜んでいる、その何倍もの知識や、余談を知っていないと、
面白くなりませんからね。
あと、なんと言っても大事なのが、
真実を伝えるのではなく、中学生が理解できるように翻訳して
伝えるという翻訳作業。時に積極的な「嘘」や
あえての「理論無視での丸暗記強制」も必要になります。
そのさじ加減が難しい。
そういう事を蓄積するのが楽しいと思える人でないと、
仕事はただただ、辛いものになります。
 
2015年中に、2016年の新教科書採択が決定されるので、
講師側では、既に、来年、新教科書の研究が始まります。
2012年教科書時点でまごまごしてたら、ダメだw
 
2012年教科書を通して、私的盲点だった知識の整理中。
2008年以前の教科書ではあまり詳しく触れられていなかった部分を
箇条書きで。
 
ベネジクト液
以前は、糖があれば、加熱して赤褐色までしっておけばよかったが、
今は、スタートの色、糖が少ないとき、濃いときの3色を覚えさせている。
 
 
発熱反応、吸熱反応の単元はマニアックな内容が多く、
中学教科書では、化学反応式としてではなく、
現象だけを伝えています。
吸熱反応=寒剤という誤解を生みやすい誘導方針も気になります。
 
炭酸水素ナトリウム+クエン酸で、吸熱、二酸化炭素発生
生徒によっては、
炭酸水素ナトリウム+クエン酸二酸化炭素
って勘違いするはず!
 
塩化アンモニウム+水酸化バリウムで、吸熱、アンモニア発生も
ちゃんとした反応式は教えない。
しかも、この実験は、寒剤としてだけでなく、
試験管の混合物をバーナーで
加熱し、アンモニア捕集する実験もあるので、見た目は、
発熱反応である鉄+硫黄の化合実験と一緒。
 
吸熱=冷たくなる反応
発熱=熱くなる反応
という単純な認識では、間違いなく誤解を生むと思う。 
 
 
融解熱と溶解熱の理論が組み合わさった、
塩化ナトリウム+氷で寒剤化する事は、化学反応ですらない。
 
ここは、リアル中学生は、大混乱するはず。
 
濃硫酸+水で大量の熱は一般常識だけど、
濃硫酸+氷だと、逆に、マイナス34℃まで下がる
こんなのになると、教える側でも、知らない人が出てくる。
 
 
鉄鉱石から鉄を作るとき必要なもの2つ
コークス(炭素)は昔の教科書でも教えていたけど、
今は、石灰石も教える。
石灰石は、還元とは何の関係もなく、
不純物をスラグとして取り除く働きをしているだけなんだけど、
還元を教えるときに、余計な事を言うと、
混乱するはず?
 
鉄粉を酸化させるときに、必要なもの2つ
これも、昔は、酸素だけ知っていたらよかったのに、
触媒としてはたらく、塩化ナトリウム水溶液も覚えさせている。
主題がぶれなければいいが。
 
昔から、反応に物質として加担するものと、
触媒として加担するものがあやふやな生徒が多い。
塩酸+石灰石石灰石は減っていくが、
使いまわすという事実を知らなかったりする。
 
銅はガスバーナーの外側の炎だと酸化され、内側の炎だと還元される。
鉄は、どちらでも酸化。
これも、昔は、銅を加熱で酸化
銅+炭素、または水素を加熱で還元
だけを知っておけばよかった。
 
鉄と硫黄の化合実験で、試験管の口を上げて、混合物上部から
加熱する理由と、加熱時に、脱脂綿で栓をする理由。
教科書では理由記載なし。多くの固体物質の加熱では、
試験管の口を下げて、加熱するのとは違う理由に今更びっくり!
試験管が割れるからと間違えて認識していました。
 
原子記号=化学式そのままの物質の非分子、分子の違い。
金属は非分子、硫黄も非分子、炭素は、非分子だけど、ダイヤモンドだと分子
アルゴンも分子
 
共有結合という言葉を教えずに、非分子、分子の区別を
丸暗記させるとか、無茶すぎます!
 
脱ゆとり教科書、おそるべし。
 
ただ、圧倒的に8年前と違うのが、
 
グーグル+知恵袋系+ウィキ
 
がすさまじく進化しているという事。
 
検索すれば、
中学生でも理解できるように噛み砕いて説明した
理論が、既にweb上に、大量にストックされています。
しかも、手元のタブレットで一発検索。
 
昔は、分厚い文献や、専門書をめくって
やっと得た知識だのが、一瞬で手に入ります。
 
しばらく、ネットに頼りっぱなしです。