陰翳礼讃337 激しい葛藤の価値

過去を見直したいという欲求は限りある命だという認識が高まり

残る時間をもっと賢明に使いたいという気持ちから生じる

これまでの人生で何をしてきたのか

何を得て何を与えているのか

自分自身に、そして他人に真に欲しているのはなにか

自分の中心となる価値観は何か

その価値観が生活にどう反映しているのか

自分の一番の才能は何か

その才能をどう活用しているのか

若い頃の夢で何を果たしたのか

そしていまなにをしたいのか

今の自分の欲望と価値観と才能を並立させて生きていけるのか

今の生活をどう変えたら、将来のためにより良い基盤が築けるのか

このような疑問を持って日々の生活を振り返ると、自動化していた

日常に対して何か物足りなさを感じるようになる

何か違うといった思いが脳裏をよぎる

疑問がわくのは仕事に対してだけではない

プライベート面にも物足りなさや納得のいかなさを感じるようになる

この時期特有の人生の迷い

激しい葛藤

生活のほとんどあらゆる面に疑問を抱き、

もうこれまでのようにはやっていけないと感じる

新しい道を切り開くか、あるいはこれまでの道を修正するのに数年を要する

理性を失うことが多い

自分の生活の現状に疑問を抱き、より自分らしい人生、より納得のいく人生に向けて修正しようとする衝動

心の中に住む人物の声が聞こえる

定められた目標に到達できたかできなかったかにはおかまいなしに、夏は過ぎ去る

自分が限界にきたこと、自分にはもうこれ以上大きな責任は負いきれないのだという決算報告を自分に提出しはじめる

やり残したことがあるのではないか

これまでの人生で、何か忘れ物をしているのではないか

といった思いに駆られる

心の危機は生活を変革する絶好のチャンス

葛藤の時期の後には落ち着いた時期がやってくる

成熟する事にも肯定的な意味がある

興奮と闘いの時代であった青春時代が美しいと同じように

老いること、成熟することもその美しさと幸せを持っているのだ

 

葛藤するからこそより納得のいく生活へと軌道修正していくことができる