伊藤計劃 ハーモニー 映画版 ~全て調和が取れている世界の恐怖 ディストピア傑作

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私的課題映画だった「伊藤計劃 ハーモニー」を観ました。

争いが絶えない世 VS 全てに調和が取れた天国という名のディストピア
の葛藤です。
うすい桃色モノトーンの街、全員うそ臭い穏やかな表情の群集
恐怖、不安がゼロという気味の悪さを映像美で見せ付けられます。

作品イメージとしてはエヴァサイコパスに非常に似ていますね。
後の世で21世紀初頭の文化潮流といわれてそうです。

実際の人類はこの2極をフラフラと揺れ動いて、
常に双方の痛みと快感を同時に味わい続けているものなんだろうなと。

ステレオタイプの天国・・・蓮の華の上でフワフワ浮いて
半開きの目で穏やかにすごす「だけ」の場所って
むしろ地獄じゃないのかと子供の頃漠然と感じていたのですが、
まさにそのテーマを掘り下げた内容ですね。

仏教の言う、無欲のススメって、執着につかれきった瞬間に
効力を発するのであって、恒常的に無欲が続く状態なんてのは
人として死んでいるのと同義だと思います。

しかしこの作品、想像通り、
その辺のお気楽娯楽作品とは一線を画する問題作です。
ここまで哲学的、宗教的だと、ライト層は置いてけぼりで、
カルト受けしかしない=売り上げ△なんだろうな。

作った人たちもコレで儲けて~と思っているかは
怪しいもので、好きなものを作らせてもらえたから、
好きな人が見てねってオーラを感じますね。
ある意味押井守的な創作活動です。

原作はレジェンド中のレジェンド。
2008年12月に発表され、作者はその3ヵ月後に
34歳で病で倒れるという。
創作活動でまだ2作目!!

死後SF系の数々の賞を総なめ。
そこらへんの娯楽ラノベ(悪いといってるわけではないw)
とはわけが違います。

ベストSF2009 第1位
第40回星雲賞日本長編部門

生きておられれば僕と同世代。
10年たった今なら、どんな世界をみせてくれてたんだろう。